量子情報関東Student Chapter
第11回Student Chapter講演会詳細
- 開催時間: 14:00-15:50
- 開催場所: マルチメディアルーム (14棟地下2階)
講演1 14:00-14:50
- 講演題目: 量子フィードバック制御理論の基礎 (講演資料)
- 講演者: 山本直樹 (慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 専任講師)
- 講演要旨:
量子系を制御する方策として、系を時間連続的に測定し、測定結果に基づいた操作を行う「フィードバック制御」によるものが容易に思いつく。しかし、古典系の場合と異なり、量子系については例えば非可換物理量を同時に測定することができないなど、測定に本質的な制限が課せられる。また、制御を考慮するにあたって、測定のバックアクションも見逃せない問題となる。本講演では、このような問題をクリアし新しい量子情報操作プロトコルを提供する「量子フィードバック制御理論」の基礎を説明する。とくに、この理論の実際的恩恵として、エンタングルの確定的生成法などについて説明する。
講演2 15:00-15:50
- 講演題目: シリコン量子コンピューティング
- 講演者: 伊藤公平 (慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 教授)
- 講演要旨:
慶應におけるシリコンを用いた量子コンピューティングに関する研究を紹介する。シリコン中の量子ビットの候補としては、シリコン核スピン、リンドナー核スピン、リンドナー電子スピンに着目している。これらのスピン物性研究の概要を紹介する。
第11回Student Chapterポスター発表詳細
- 開催時間: 16:00-18:00
- 開催場所: マルチメディアルーム (14棟地下2階)
発表一覧
- タイトル: 中性粒子ビームエッチングによるGaAs微細構造のフォトルミネッセンス評価
- 発表者: 篠原 肇 (慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 伊藤研究室 学部生)
- アブストラクト:
高効率半導体量子ドット太陽電池および量子ドットレーザーの実現には高密度・高規則性を持つ量子ドットが不可欠である。高密度・高規則性を持つ量子ドットの作成方法としてエッチング式量子ドットの開発が進んでいる。従来のプラズマによるエッチングでは、表面欠陥が生じ、発光強度が低下した。新たに表面に欠陥を生じない方法として中性粒子ビームエッチングが提案された。我々はこのエッチング方法で作成された構造が、量子ドットとして機能するかどうかをフォトルミネッセンスにより評価した。
- タイトル: 超伝導磁束量子ビットのJBAによる測定
- 発表者: 馬場 達也 (東京理科大学 理学部 応用物理学科 高柳研究室 学部生)
- アブストラクト:
JBA(Josephson bifurcation amplification)による量子ビットの読み出し原理と、これを用いた測定結果を発表する。現在までにJBAを用いて、超伝導磁束量子ビットによる直接結合2量子ビットの測定や、真空ラビ振動の観測に成功した。結合した2量子ビットは量子計算に必要とされているCNOTゲートとしての利用が期待されている。また、真空ラビ振動は量子ビットのバス化に応用が期待される現象である。
- タイトル: 核スピンを排除したSi/SiGeヘテロ構造の作製と評価
- 発表者: 有川 格 (慶應義塾大学大学院 理工学研究科 基礎理工学専攻 伊藤研究室 M1)
- アブストラクト:
電気的に制御される量子ドットの土台となる二次元電子ガスを,擬似的に核スピンを排除した物質として,Ⅳ族半導体であるシリコンとゲルマニウムの同位体を用いて作製することを目標としている.同位体制御されたSiGeヘテロ構造は,理論的に予想される電子スピン緩和時間の長さから,将来的な量子情報処理を行う物理系の一つとして大きく期待されている.ポスター発表では,その過程で必須となるシリコンゲルマニウム層の組成制御,シリコンの格子歪みの定量的評価を,X線回折,ラマン分光を用いて行い,所望構造が得られているのかを議論する.
- タイトル: Experimental demonstration of coherent feedback for squeezing optical field
- 発表者: 飯田 早苗 (慶応義塾大学 理工学研究科 基礎理工学専攻 山本直樹研究室 M2)
- アブストラクト:
Coherent feedback is a non-measurement based, hence a back-action free, method of control for quantum systems. We particularly considers a problem of squeezeing enhancement and give a realistic specification of the coherent feedback control. Experimental results demonstrate a practical parameter range where the enhancement will experimentally be observed.
- タイトル: Demonstration of the strong coupling in a quantum dot-nanobeam cavity system
- 発表者: 太田 竜一 (東京大学大学院工学系研究科電気電子工学専攻岩本研究室 M2)
- アブストラクト:
Strong coupling between a one-dimensional photonic crystal (PhC) nanobeam cavity and a single quantum dot (QD) was demonstrated for the first time. Thanks to a high quality factor Q (~25,000) with small mode volume (0.38×(n/λ)3) of the nanobeam cavity, a clear anti-crossing behavior with a Rabi splitting of 226 μeV was successfully observed. The ratio of the QD-cavity coupling strength to the cavity decay rate was estimated to 2.1. This is, to the best of our knowledge, the highest value among any QD-based cavity QED system.
- タイトル: Si中のリンドナー電子のデコヒーレンス過程:リンドナー電子間の相互作用による影響
- 発表者: 川上 恵里加 (慶應義塾大学大学院 理工学研究科 基礎理工学専攻 伊藤研究室 M2)
- アブストラクト:
The instantaneous diffusion contribution to decoherence process through the interaction between phosphorous donor electron spins has been observed. Extrapolation to eliminate the effect of instantaneous diffusion gives the phosphorous donor electron spin coherence time T2 = 667μs, which is about 2 times longer than that obtained in the previous research.
- タイトル: エキシトン・ポラリトンBECを用いた一次元物理と量子リング構造の研究
- 発表者: 桝本 尚之 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 山本研究室 D2)
- アブストラクト:
GaAs微小共振器中のエキシトン・ポラリトンのボースアインシュタイン凝縮(BEC)は、金属薄膜による任意の2次元形状のトラップが可能であり、多様な量子シミュレーションの可能性を秘めている。本発表では、これを用いた一次元物理と量子リング構造の研究を扱う。
- タイトル: Optically detected NMR of 31P donor in 28Si
- 発表者: 関口 武治 (慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科 伊藤研究室 特別研究准教授)
- アブストラクト:
The electron and nuclear spins of the shallow donor 31P are promising qubit candidates invoked in many proposed Si-based quantum computing schemes. We have recently shown that the near-elimination of inhomogeneous broadening in highly isotopically enriched 28Si enables an optical readout of both the donor electron and nuclear spins by resolving the donor hyperfine splitting in the near-gap donor bound exciton transitions. We have also shown that optical pumping of the same transitions can very quickly produce electron and nuclear hyperpolarizations at low magnetic fields, where the equilibrium electron and nuclear polarizations are near zero. Here we show preliminary results of the measurement of 31P neutral donor NMR parameters by using this optical nuclear hyperpolarization mechanism to initialize the 31P nuclear spin system, followed by optical readout of the resulting nuclear spin population after manipulation with NMR pulse sequences. This allows for the observation of single-shot NMR signals with very high signal-to-noise ratio under conditions where conventional NMR is not possible due to the low concentration of 31P and the small equilibrium polarization.
- タイトル: 状態の初期化,多数回試行の重ね焼きを必要としない2量子ビット間イジング相互作用定数の推定
- 発表者: 安藤 慧 (早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 湯浅研究室 M1)
- アブストラクト:
量子系のパラメータ推定を議論する.通常は,物理量の期待値やその時間発展を通じてパラメータを推定するが,それには同じ実験を多数回行う必要がある.本研究では2量子ビット間の相互作用定数の推定を例にとり,一方の量子ビットに一定時間間隔で観測を繰り返すことで得られる一連の観測データからパラメータを推定する方法を提案する.あらかじめ系を特定の状態に初期化することも,多数回試行も必要としない点が特徴である.
- タイトル: 観測とフィードバックの繰り返しによるベル状態の生成と操作エラーの影響
- 発表者: 奥出 淳也 (早稲田大学大学院先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 湯浅研究室 M1)
- アブストラクト:
私達は,「繰り返し観測による純粋状態生成」の方法を提案し, 追究してきた. 2つの相互作用する量子系を用意し, その一方の系に一定の時間間隔で射影的な状態確認を繰り返し行う. 特定の状態にあることが毎回確認されると, もう一方の系が任意の初期状態から純粋状態へと導かれる. この機構を状態準備に利用しようというのが基本的なアイデアである. しかし, 特定の状態にないことが一度でも確認されると, この状態準備法は失敗に終わってしまう. 確率的な状態生成のスキームであった. 本研究では, 特定の状態にあることが確認されなかった場合にフィードバックを加えることで, 確率1で機能するスキームに改良し, その一例として超伝導量子ビット系を想定したモデルでベル状態を生成する方法を提案する. 一連の生成操作で系に引き起こされる状態変化がエルゴード写像で記述されることを示すことで, ベル状態への収束が解析的に証明される. 量子系制御にエルゴード写像が有用となる例として興味深い. また生成操作にエラーが生じた場合の影響も検討する.
- タイトル: 量子フィルタリングにおける不確かさの限界
- 発表者: 杉山 綱祐 (慶應義塾大学大学院理工学研究科 基礎理工学専攻 山本直樹研究室 M1)
- アブストラクト:
We consider a general linear quantum system that is continuously monitored through an optical probe field, and study the fundamental uncertainty limits that arise in the filtering. The steady-state uncertainty of a canonical observable is then given in a general form, providing the system configuration for the uncertainty to asymptotically reach zero or beat the quantum noise limit. Further, the fluctuation of the same system yet unmonitored is compared to the filter uncertainty; the lower bound of those difference, which has an interpretation of the effectiveness of feedback control, is obtained.
- タイトル: 3-qubit純粋状態のLOCC変換の必要十分条件
- 発表者: 田島 裕康 (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 羽田野研究室 M1)
- アブストラクト:
3-qubit 純粋状態 |ψ〉から |ψ'〉への成功確率 1 の LOCC 変換が可能であるための必要十分条件を与える。これは Nielsen が 1999 年に 2 者に対して行った研究の拡張になっている。私の条件は 2 者間のもつれ量 jAB , jAC , jBC と 3 者間のもつれ量 jABC , J5 の 5 つのエンタングルメント指標の変換式として与えられる。これによって、3-qubit 純粋状態のもつれ量の移動と散逸が 成功確率 1 の LOCC 変換によってどのように起こるかを完全に解明した。また、3 者間のもつれは 2 者間のもつれに変換できるが、 逆は不可能である事が示され、従って 3 者間のもつれは 2 者間のもつれよりも上位のもつれ量である事が示唆された。上の必要十分 条件は、新たに定義したパラメータを使うと、2 つの任意の純粋状態 |ψ〉から |ψ'〉への成功確率 1 の LOCC 変換が可能であるか否か を容易に判定できる形に書き直す事ができる。さらに、3-qubit 純粋状態においては、成功確率 1 の LOCC 変換は、それがもし可能 であるならば、観測結果を局所ユニタリ変換で一意にできるような一般測定を 3 回、任意の順番で qubit A, B, C に施すことで再現 できる事も示された。これは Horodecki らが 1998 年に 2 者に対して行った研究の拡張になっている。
- タイトル: 連続変数システムにおける動的量子誤り訂正
- 発表者: 多治見 剛 (慶應義塾大学大学院 理工学研究科 基礎理工学専攻 山本直樹研究室 M1)
- アブストラクト:
連続変数システム, 特に, 線形なオプトメカニカル系における「動的量子誤り訂正」を提案する. 「動的量子誤り訂正」は, 誤り訂正を時間連続なフィードバック制御として捉え, 不断に起こり続けるエラーにアプローチするものである. 本研究では, 古典制御理論で広く用いられているカルマンフィルタとLQGの概念を導入することで, 最適な誤り訂正の方法を導出する. その解析解とシミュレーション結果をもって, 我々のスキームの優位性を示す.
- タイトル: バタフライネットワーク上での量子計算
- 発表者: 金城 慶之 (東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 村尾研究室 M2)
- アブストラクト:
ネットワーク上における量子通信についてこれまで,林[PRA 76, 040301 (2007)]によるものをはじめとして様々な結果が知られていた。今回我々は林のモデルを拡張して,ネットワーク上における分散量子計算を提案し,特にバタフライネットワークについて考察した。その結果,最大エンタングルメント対(ebit)を加えることなしに制御ユニタリゲートが施せることを示した。また,1ebitを加えて,ネットワーク内部のリソースを節約し,制御トレースレスユニタリゲートが施せること,及び 2ebitを加えて、クリフォードゲートが施せることを示した。これらの結果はネットワーク内の通信量を節約するのに有効であると考えられる。
- タイトル: 二者間量子ゲームにおける成功確率の非古典的振る舞い
- 発表者: 立本 貴大 (大阪大学大学院 基礎工学研究科 物質創成専攻 井元研究室 M2)
- アブストラクト:
古典論と量子論の境界を定めるベル型の不等式として色々なタイプのものが知られているが、少し変わったタイプの古典限界を提示し、それが量子論では破られることを示す。なお、このタスクには量子限界も存在し、量子論を越えた理論ではこの限界が破られるという点で、CHSH不等式と類似している。
- タイトル: 複合対立仮説の下での完全混合状態の仮説検定
- 発表者: 田中 冬彦 (科学技術振興機構さきがけ数学領域 PD)
- アブストラクト:
単純帰無仮説と単純対立仮説の下では、量子Neyman-Pearsonの補題により最適な検定方法(POVM)が古くから知られていた。量子相対エントロピーの意味づけなど漸近的な最適性に関する議論でも、単純帰無仮説と単純対立仮説の下で考察されている。最近、最大エンタングル状態のLOCCの下での仮説検定で複合対立仮説が扱われるようになり、量子系の場合でも、帰無仮説・対立仮説が複数の場合の仮説検定が重要であることが認識されつつある。そこで、本発表では、量子系特有の難しさが表れる最も初等的な例として、未知の純粋状態を複合対立仮説とする完全混合状態(単純帰無仮説)の仮説検定を考察する。一般に有意水準αの下で、検出力を一様に大きくする一様最強力検定は存在しない。しかし、2次元 qubit について複合対立仮説をBloch球の半分からなる純粋状態にとると一様最強力「不偏」検定が存在することが示される。
- タイトル: 時間的に非一様な量子ウォークの局在化モデル
- 発表者: 町田 拓也 (明治大学先端数理科学インスティテュート PD)
- アブストラクト:
あるユニタリ行列で時間発展が定義された1次元格子上の2状態量子ウォークは,粒子が原点から出発した場合,時間が経過するにつれ,任意の場所で,粒子が観測される確率は0に近づく.しかし,粒子を観測する時刻の半分の時刻において,異なるユニタリ行列を作用させると,原点付近で粒子が観測される確率が高くなる.今回紹介する結果は,原点から出発した量子ウォークに対し,ある長時間極限での確率の極限値と分布収束定理である.
- タイトル: 物理的量子ビット群への効率的な量子変数配置方法の構築
- 発表者: 石崎佳織 (慶應義塾大学 環境情報学部 B3)
- アブストラクト: