量子情報関東Student Chapter
第13回関東StudentChapter アブストラクト(ポスター発表)
- 開催時間: 2011/11/10(木) 16:30-18:30
- 開催場所: 国立情報学研究所 ミーティングルーム2009,2010(20階)
ポスター1
- タイトル: トモグラフィーを用いない量子系の純粋度の測定
- 発表者: 田中 亨 (早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 中里・安倍研究室 M1)
- アブストラクト: 量子系の状態の純粋度は量子系のコヒーレンスやエンタングルメントを特徴付ける重要な物理量である。純粋度を測定する方法として、トモグラフィーや量子回路を用いる方法が提唱されている。トモグラフィーはn準位の場合には、測定の種類がn^2-1種類必要であり、量子回路を用いる場合には、参照系(補助系)として対象系と相互作用するキュービットを用意する必要がある。
ポスター2
- タイトル: 観測とランダム操作の繰り返しによる2量子ビット間エンタングルメント生成
- 発表者: 寺澤 翔一郎 (早稲田大学理工学術院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 湯浅研究室 M1)
- アブストラクト: 量子情報の分野では, エンタングルメントと呼ばれる量子力学特有の状態が重要な役割を担う. したがって, そのような量子性の高い状態をいかに準備するかは, 量子情報技術の実現に向けて重要な課題となっている. 本研究では, 2量子ビット間にエンタングルメントを生成する方法を提案する. 観測による状態変化を利用することに加え, 任意の初期状態から確率1で生成可能な点が大きな特徴である. 特に本研究では, 観測の結果に応じて加えるフィードバックとしてランダムな操作を検討する. また環境の影響下におけるこのスキームの有効性も検討する.
ポスター3
- タイトル: 光子除去操作における量子モードフィルタリング
- 発表者: 水田 貴裕 (東京大学大学院 工学系研究科物理工学専攻 古澤研究室 M1)
- アブストラクト: 我々の研究室ではスクイーズ光から1光子除去することによって、シュレディンガーの子猫状態と呼ばれる非ガウス型状態を生成し、その状態を量子テレポーテーションすることに成功した。今回は適切なフィルタリングを行うことでテレポーテーションの結果が向上したのでこの実験結果について報告する。
ポスター4
- タイトル: 光子検出と変位操作を用いた光子数状態の重ね合わせの生成
- 発表者: 宮田 一徳 (東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 古澤研究室 M1)
- アブストラクト: 非縮退パラメトリック過程と光子検出による測定誘起によって光子数状態が生成できるが、この光子検出に変位操作を組み合わせることで、光子数状態の任意の重ね合わせを作ることができる。本研究では3光子レベルまでの重ね合わせの生成を目標としている。当日は実験内容の説明と実験経過の報告をする。
ポスター5
- タイトル: 複数の同種粒子の散乱によるポテンシャル強度の推定
- 発表者: 奥出 淳也 (早稲田大学大学院 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 湯浅研究室 M2)
- アブストラクト: 物質の内部構造を解析するために, 様々な分野で散乱現象が利用されている. 本研究では, 複数個の同種粒子を散乱ポテンシャル(物質)へ同時に入射し, 散乱された粒子のデータから, 散乱ポテンシャルを特徴付ける複数のパラメータを推定する問題を考察する. このとき, 量子力学特有の性質である「同種粒子の識別不可能性」が, パラメータの推定精度にどのように影響するのかを検証する. 一例として一次元散乱での2つのパラメータ推定問題を検証した結果, ボース粒子を用いた場合に推定精度が向上することを確認した.
ポスター6
- タイトル: 量子中継器ネットワークコーディング
- 発表者: 佐藤 貴彦 (東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 今井研究室 M2)
- アブストラクト: これまでの量子ネットワークコーディングに関する研究は,量子通信路によって構成され,新たな量子レジスタを容易に導入できる抽象的なネットワークモデルを対象としたものが中心であった.本研究では実用性に主眼を置き,量子中継器によって構成されたネットワーク上で利用可能であり,かつ,必要となる量子資源の極小化を目指した量子ネットワークコーディングプロトコルを構築した.このプロトコルでは,古典通信路によって直接接続された量子中継器間にあらかじめ共有されているEPR 量子対以外に量子資源を導入することなく,局所量子操作および古典通信のみによって二組の送信側および受信側中継器の間に新たなEPR 量子対を生成することが可能である.また,将来の通信が輻輳する大規模量子中継器ネットワークにおけるボトルネック問題に対する有効な対処法になりうると考えられる.
ポスター7
- タイトル: 3量子ビット系におけるSvetlichny-type不等式を用いた非局所性の解析
- 発表者: 関口 峻史 (早稲田大学 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 中里・安倍研究室 M2)
- アブストラクト: 量子力学が持つ非局所性はBell-type不等式の破れの度合いによって定量化することができる.2量子ビット系における非局所性についてはGisin の結果が詳しいが,多量子ビット系における非局所性についてはよくわかっていない.本研究では3量子ビットの純粋状態についてSvetlichny- type不等式を用いた非局所性解析を行う。それにより3体のうちどの2体間も非局所な相関を持っているような3体独自の非局所相関について調べる.
ポスター8
- タイトル: 弱測定を用いた増幅
- 発表者: 田中 咲 (慶應義塾大学 理工学部 物理学科 理論研究室 M2)
- アブストラクト: Aharonovらによって提唱された弱測定の結果は、無限に大きくなることが知られている。この理論は信号増幅の手法として実験的に用いられてきている。Aharonovの理論では線形近似が行われているが、近似を取り払うと弱測定の結果は有限の範囲に収まることが分かった。我々は、近似を用いない完璧な理論のもとで、信号増幅に対して理論的に再考察を行った。さらに光学実験の結果と比較を行った。その結果、信号の大きさに依存した非線形増幅率を提唱した。また、近似を用いない理論の重要性を示した。
ポスター9
- タイトル: Mean King問題と量子誤り訂正符号
- 発表者: 吉田 雅一 (中央大学 理工学研究科 情報セキュリティ科学専攻 今井秀樹研究室 D2)
- アブストラクト: Mean King問題は,1)Aliceによる初期状態の準備,2)Kingの射影測定,3)AliceによるKingの測定結果推定に,話を分けることができる.本研究では,Kingの測定を量子状態に誤りを加える行為と捉えることで,初期状態として量子誤り訂正符号の符号状態を準備し,誤りの種類を検出することが同問題の解法となることを示す.また,二準位系に関する具体的な解法を導き,Vaidman等による既存研究 [Phys.Rev.Lett.58,1385]を量子誤り訂正符号の視点で見直すことが可能であることを示す.
ポスター10
- タイトル: 超伝導転移端センサを用いた光子数識別器の開発
- 発表者: 藤井 剛 (日本大学大学院 理工学研究科 量子理工学専攻 量子光学研究室 D3)
- アブストラクト: 超伝導転移端センサ(Superconducting transition edge sensor; TES)は、超伝導転移領域での急峻な温度変化を利用したカロリメータであり、ガンマ線からマイクロ波に至るまでのあらゆる波長に感度を持ち、半導体検出器では得られない高いエネルギー分解能力を実現している。我々は、可視-近赤外領域の光子検出に最適化したTESの開発を行い、波長850 nm及び1550 nmの光子数識別を実現した。今回、我々が開発したTESの性能について報告する。
ポスター11
- タイトル: 量子i.i.d.状態の仮説検定問題における数値シミュレーション
- 発表者: 坂下 達哉 (電気通信大学 情報システム学研究科 情報ネットワークシステム学専攻 長岡・小川研究室 / 東京大学 情報理工学系研究科 数理第4研究室 PD)
- アブストラクト: 量子情報理論において,量子i.i.d.状態(n次のテンソル積で表現される状態)に関する極限式は重要である.本研究では,2×2の密度行列から成る量子i.i.d.状態の仮説検定における誤り確率を数値的に計算する問題を扱う.この計算には, 2^n×2^nという非常に大きなサイズの行列の固有値問題が現れるが,テンソル積の既約分解を用いることによって,最大サイズ(n+1)×(n+1)までのいくつかの行列の固有値問題を解くことに帰着できる.本研究ではこの方法を用い,多倍長化,MPIによる並列化を施すことによって効率的な実装を実現した.さらに,上記の計算手法を新種の量子中心極限定理という数学的予想の検証に応用した.
ポスター12
- タイトル: 2次元格子上の離散時間量子ウォークの極限定理
- 発表者: 町田 拓也 (明治大学 先端数理科学インスティテュート PD)
- アブストラクト: ランダムウォークの量子版である量子ウォークは,ランダムウォークと同様にシンプルなダイナミクスをもつ.しかし,量子ウォーカーはランダムウォーカーとは異なる挙動をとり,興味深い振る舞いをする.これまでに,1次元格子上の量子ウォークに対しては,さまざまな極限定理が導出されてきた.一方,2次元以上の格子における量子ウォークは,1次元モデルに比べて解析的計算が煩雑となり,その数学的な結果は少ない.本研究では,2次元格子上で原点から出発するある離散時間量子ウォークに注目し,長時間極限における極限分布を導出した.
ポスター13
- タイトル: Magnetic field sensing beyond the standard quantum limit under the effect of decoherence
- 発表者: 松崎雄一郎 (日本電信電話株式会社 NTT物性科学基礎研究所 社員)
- アブストラクト: Entangled states can potentially be used to outperform the standard quantum limit by which every classical sensor is bounded. However, entangled states are very susceptible to decoherence, and so it is not clear whether one can really create a superior sensor to classical technology via a quantum strategy which is subject to the effect of realistic noise. This paper presents an investigation of how a quantum sensor composed of many spins is affected by independent dephasing. We adopt general noise models including non-Markovian effects, and in these noise models the performance of the sensor depends crucially on the exposure time of the sensor to the field. We have found that, by choosing an appropriate exposure time within the non-Markovian time region, an entangled sensor does actually beat the standard quantum limit. Since independent dephasing is one of the most typical sources of noise in many systems, our results suggest a practical and scalable approach to beating the standard quantum limit.